ハナちゃんストーリー

DOG&CAT STORYハナちゃん物語(後編)

後ろ足が立たない、
歩けない!
排泄はお腹にタオルを
回して立たせて

ハナちゃん物語

退院して体の方の回復はしていましたが、足の方は立つことができませんでした。排泄は、気分転換も兼ねて芝生のある所まで、ハナちゃんを籠に入れて2人がかりで抱えて行き、タオルをお腹に回して立たせてさせました。歩くことはほとんどできませんでしたが、痛みがなくなって笑顔が見えました。背中には放射線治療の跡だと思われる被毛が黒く焦げたようになっているところがありました。

退院後1か月くらい過ぎた頃から、立たせる練習から歩く練習をさせてみようと、お腹にタオルを回して2人がかりで、少しずつ歩かせるようにしてみました。リハビリです。自力ではまだ立つことができません。立たせても、足の指が裏返っていました。でも、スタッフとともに諦めずに取り組みました。毎日朝とお昼、夕方の3回、少しずつリハビリを続けていました。
そんなある日、突然ハナちゃんが立てたのです。足が裏返らなくなったのです。もちろん、お腹にタオルをしてですが。今度は少し歩かせるようにしたら、後ろ足を引きずりながらも歩くことができました。私たちもハナちゃんも懸命にリハビリをしました。時には、ハナちゃんの爪から血が出たりしました。足が裏向きになり引きずってしまうからです。思わず、「ごめんね」と謝りました。
でも、ハナちゃんも頑張りました。お腹にタオルをして少しずつ歩けるようになったのです。もちろん、時間はかかりました。手術をした先生も驚いて感動していました。“歩けるようになったんだ!”と。ハナちゃんより前に手術をした犬は、歩くことができず車椅子生活になっていたからです。ハナちゃんの後に同じ病気で手術をした犬は、1年後に亡くなったのだそうです。

先生は、ハナちゃんの症例を学会に発表し、今まで見逃されていたかもしれない病気であること、手術をして歩けるようになる可能性があることを紹介したそうです。もちろん回復には、飼い主と手術を受けた犬の努力も必要です。病院へは、退院後も月1回検査に行きました。MRIとCT検査も受けました。

リハビリと努力で、普通に走れるようになったハナ

ハナちゃんは1年たった頃には自分で歩けるようになり、散歩にも行けるようになりました。この頃には、後ろ足には靴下を2枚重ねではかせていました。なぜなら後ろ足を引きずるために、爪からの出血があったからです。靴下は毎日破けるので、今度は犬の靴を見つけてはかせるようにしました。これは本当に良い方法でした。こうして、もう歩けないと言われたハナちゃんは、片方の足を少し引きずりながらも、リハビリと努力で普通に走り回れるようになったのです。

ハナは新しく入った犬たちの教育係をしてくれました

マザールーフのもとへは、犬たちが次々にやって来ました。そんな時にはハナちゃんが強い味方になってくれました。いろんなルールをハナちゃんが他の犬へと教えてくれていました。私たちは本当に助かりました。例えば、犬同士が威嚇しあっている時はハナちゃんの出番でした。叱って仲裁をするのです。

優しくて気の強いハナちゃんは、私たちをも優しく支えてくれる存在になっていました。私たちは辛いことや悲しいことがあるとハナちゃんに話すようになったのです。ハナちゃんは黙って話を聞いてくれるのです。そして、手をペロッと舌で舐めて私たちを慰めるのです。悲しくて泣いていると、泣き止むまで傍にいてくれるのです。ハナちゃんはそんな存在になっていたのです。

でも、ハナちゃんは、とても多くの大病を患いました。大人になって胃捻転にもなりました。その時も、スタッフの素早い発見で一命を取り留めました。夜間動物病院へ走って手術をしてもらって、助けていただいたのです。
次に、誤嚥性肺炎にもなりました。これも大学病院の先生に見つけてもらって助かりました。その時も看病が大変で、食後30分は食道をまっすぐにする必要があるので、私たちスタッフが抱っこして、上半身を支えていました。ハナちゃん自身の負担もありますが、スタッフの負担も大変なものだったので、赤ちゃんを座らせる椅子を買って座らせるようになりました。ハナちゃんはその椅子に30分、大人しく座っていました。本当に頭のいい犬で、状況を理解してじっとしているのです。
ハナちゃんは今自分に必要なことを把握している、私たちの相棒です。あるスタッフは、ハナちゃんに何度も救われた、感謝をしている、と言います。幼くして捨てられ、命に関わる大病をも克服して頑張って生きているハナちゃん。本当に優しい心で私たちを支えてくれる、背中に天使の羽をもった犬なのです。

特定非営利活動法人マザールーフ